ワインの銘柄でよく登場する”シャトー”と”ドメーヌ”。「シャトー・マルゴー」や「シャトー・ペトリュス」、「ドメーヌ・ド・シュヴァリエ」など様々な銘柄がありますが、その違いは何でしょうか?
シャトーはフランス語で“城”を意味し、ドメーヌは“領地”や“所有地”、”区画”を意味していますが、シャトーもドメーヌも、自社畑を持ち、ブドウ栽培からワインの醸造までを行う栽培家兼醸造家である「生産者」を指しています。
本来、城を意味する”シャトー”は、フランス・ボルドー地方の生産者を指しています。そして、”ドメーヌ”はブルゴーニュ地方を中心に、ボルドー地方を除く地域で使用されていますが、その意味合いには違いがあります。
【シャトー】 1789年のフランス革命の頃、ボルドーの畑を所有している者は城を持っている貴族で、その貴族達が城の敷地内でワイン造りをしていました。そのため、ボルドー地方のワインの生産者=“城を所有する貴族”ということに由来し、ボルドーで一貫してワイン生産を行っている者をシャトーと呼びます。
シャトーは広大なお城の敷地にブドウ畑、醸造所、貯蔵庫などを備え、栽培から瓶詰まですべてを行い、生産量も多い造り手である場合がほとんどです。
シャトーの数はボルドー全体で約8000もあると言われ独自性のある優れたワインがたくさんつくられています。
【ドメーヌ】
ドメーヌは、フランス革命前、修道院が所有していたブドウ畑を、革命後に地元農民などが所有をすることになったということに由来します。一つの区画に複数の所有者がいる場合もあったということで、ボルドー地方のシャトーに比べると規模も小さく、比較的生産量も少なめです。1ha前後の、狭い畑しかもっていない造り手も多く、フランスのブルゴーニュなど、家族で経営しているところも少なくありません。
ブルゴーニュで最も偉大なワインとされる「ロマネ・コンティ」の生産者をDRCと呼びますが、これは“ドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ”の頭文字をとったものです。
ボルドーではシャトーが格付けの対象ですが、ブルゴーニュなどでは畑が格付けの対象となっています。
ボルドーはシャトーに対して格付けされるので、畑を拡張しようと思い、隣の畑を買えば、同じ銘柄のワインとして生産できます。 しかし、ブルゴーニュなどは一つのブドウ畑を複数のドメーヌが分割で所有していることがほとんどで、それぞれに土地に名前がついており、隣の畑を買っても同じ銘柄になりません。
先述のロマネ・コンティは、二家族で経営されていますが、一つのドメーヌ(=DRC)が単独所有しています。ロマネ・コンティというワインは一種類しかなく、ブドウの作付面積を増やそうと思っても、決められた面積の土地からしか生産できないのです。
また、シャトーもドメーヌも、基本的にはどちらも自家栽培・自家醸造の生産者を意味しますが、自社畑を持たず、ブドウ栽培農家から仕入れたブドウ醸造のみを行う生産者のことをネゴシアンといいます。
ネゴシアンは、樽に入ったワインを仕入れて瓶詰のみを行う業者も含まれ、フランス・ブルゴーニュやシャンパーニュなど比較的大規模生産者が多くみられます。
ボルドーでは、広大な畑を一つのシャトー(城)が所有するスタイルが中心ですが、ブルゴーニュでは、フランス革命で修道院や貴族が所有していた畑が売られ、売買を重ねるうちに分割が進んだため、4300のドメーヌ、100以上のネゴシアンと、生産者も細分化されています。