アイリッシュウイスキーの蒸留所は長い間、北アイルランドのブッシュミルズ蒸留所と南部コークの巨大ミドルトン蒸留所の2つだけでしたが、1987年、アイルランド政府の国策で、ジョン・ティーリング(John Teeling)が400万ポンドを投じ、首都ダブリンから北へ約67マイルの距離の街・ダンドークに独立系企業として新しくクーリー蒸留所をスタートさせました。
ハーバード大学でアイリッシュウイスキーの歴史の研究をしてきたジョン・ティーリングは、ジャガイモからアルコールを製造していた国営工場を購入し、ウイスキーの蒸溜所に改造して製造を開始しました。これは、アイルランドで100年ぶりに新しいウイスキー蒸溜所が誕生したことを意味しています。クーリー蒸留所では1992年より製品をリリースしています。
クーリー蒸溜所は、同一蒸溜所の中でポット蒸溜ウイスキーと連続式蒸溜によるグレーンウイスキーの両方を生産し、“アイリッシュの革命児”とさえ呼ばれるほど様々な取り組みがなされています。
まだ歴史の浅いクーリー蒸留所ですが、1998年、インターナショナル・ワイン・アンド・スピリッツ・コンペティション(IWSC)からその優れた品質を称えてトロフィーが授与されるなど、国際的な酒類コンテストで多数の受賞歴を有しています。
アイリッシュウイスキー全体の世界的な市場規模は、まだまだわずかですが、注目を浴び続けるクーリー蒸留所の登場により、売上増大が期待されています。
クーリー蒸留所の主な銘柄
クーリー蒸留所では様々な銘柄の蒸溜が行われていますが、中でもユニークなのがカネマラです。カネマラはアイリッシュウイスキーとしては珍しい方法で造りあげられています。
カネマラは単式蒸溜器を使用し、大麦麦芽だけを原料に、スコッチウイスキーの特徴であるピート香を付け、カスク・ストレングス仕様(樽出原酒)でボトリングしています。カネマラは樽出しのため、アルコール度が高めですが、その分風味やコクがあります。
飲み方としてはカネマラ1に対し、ミネラルウォーター1で割るなど水割り・ソーダ割りに適したウイスキーとされています。
ミラーズは、1843年にAdam Millar社によって生まれた由緒あるブランドでしたが、20世紀中頃、当時の蒸留所とともになくなってしまいました。それを、1994年にクーリー蒸留所が復活させた銘柄です。口に含んだ瞬間から甘さや麦芽の香味が広がります。
1992年にクーリー蒸留所が造ったウイスキーです。古代ゲール王朝ターコネルから名付けられました。薄い麦わら色のまろやかな味わいのウイスキーです。
ロックスの名の由来はロックスをつくっていたキルベガン蒸留所のオーナー“ジョン・ロック”にちなんだもので、20世紀に入って市場から消えていった銘柄ですが、そのキルベガン蒸留所産のロックスをクーリー蒸留所が復活させたものです。軽くやわらかな風味で、やわらかな香りは女性におすすめです。