ウイスキーの代名詞ともいえるスコッチウイスキーは、イギリスの北部・スコットランドで蒸留されたウイスキーです。
世界5大ウイスキーのひとつに数えられるスコッチウイスキーは、スコットランド内での蒸留や、スコットランド内で3年以上の樽熟成など、スコットランドの様々な法的条件を満たしたものでなければ、スコッチウイスキーと名乗ることができません。
今や世界をリードする名酒となったスコッチウイスキーですが、かつては辺境の地といわれたスコットランドの地酒で、その起源は中世にまで遡ります。
ウイスキーの製法そのものは、アイルランドから伝わったとされており、1494年のスコットランド大蔵省の公文書に、大麦麦芽を原料とした”生命の水”についての記述があることから、すでに15世紀にはウイスキーが製造されていたと考えられています。
ウイスキーの語源は、ゲール族の言葉”生命の水”=ウシュク・ベーハーが由来とされていますが、この言葉はもともと錬金術で使われていた用語です。
当時は、主に修道院で薬酒としてウイスキーが修道士たちによって造られていましたが、16~17世紀になると、修道院の解散によって聖所を追いだされた修道士たちが、その熟練の蒸留技術をスコットランド中に広めていきました。豪族や農民たちもおそらく自家用に少量を蒸溜していたといわれていますが、このウイスキーは、緯度の高い厳冬のスコットランドの寒い時期の気付け薬として、また遠来の客をもてなす社交の酒として欠かせないものとなりました。
そのウイスキーの人気に対し、17世紀後半になると、スコットランド議会が課税を行うことを決定し、さらに1707年のイングランドとの連合法の成立によって、ウイスキーに対する課税はさらに強化され重税となりました。
イングランド政府への反感と高税率を嫌った蒸溜家たちは山間にこもり、密造酒をつくりはじめます。これが密造酒時代の始まりです。
人目を避けて山にこもった蒸留家たちは、麦麦芽を乾燥させる燃料として、近くに無尽蔵に埋もれていたピート(泥炭)を代用し、蒸留器から滴り落ちるウイスキーをシェリーの空樽に隠して、買い手が現れるまで貯蔵しました。
こうした苦難の密造時代の副産物として、スコッチウイスキーを特徴づけるスモーキーフレーバーと、琥珀色の輝きは生まれることとなったのです。