キルベガン蒸留所(KILBEGGAN Distillery)は、アイリッシュウイスキーの蒸留所の中で最も古く、そして最も新しい蒸留所です。
アイルランドの合法的な蒸溜所の数は、1838年には94ヵ所ありましたが、1844年には61ヵ所に減少し不況の時期を経て、現在はブッシュミルズ蒸留所、(新)ミドルトン蒸留所、クーリー蒸留所、そしてキルベガン蒸留所の4か所となっています。
創業1757年のキルベガン蒸留所は最古の蒸留所として知られますが、その後はしばらく閉鎖され、2007年の設立250周年を記念して再操業を果たした蒸留所です。そのため、アイルランドで最古でもあり、最も新しい蒸留所といわれています。
アイルランドの首都ダブリンから西へ車で約1時間半の場所のタラモアという街から、さらに北へ10kmほどの距離にあるキルベガンという村にキルベガン蒸溜所は位置しています。
1757年に設立された当時は、アイルランド人連盟の反乱に加担したとしてマリンガーで息子が処刑されたマシュー・マクマナス(Matthias McManus)がライセンスを取得して運営していました。当時の蒸留所名はブルスナ(Brusa)を名乗っており、その代表ブランドが「キルベガン」でした。
1843年にはジョン・ロック(John Locke)が蒸溜所を買収し、名称もロックス(Locke`s)蒸留所となりました。3年後ジョン・ロックは亡くなりますが、その後は妻のメアリー・アン・ロックを含めたジョン・ロックの近親者らによって蒸留所は引き継がれ、生産量も増加していき、イングランドとダブリンで最も有名なアイリッシュウイスキーのひとつといわれるまで急成長を遂げました。
しかし、1920年代から1930年代の経済不況で蒸溜所は損害を受け、1947年に蒸溜所は売りに出され、人の手に渡ってしまいます。1954年には蒸溜所の生産は終了へ追い込まれ、1957年には完全に閉鎖されました。
その後の蒸留所は、養豚場や農機具のメーカーとして利用されますが、1980年代前半に地域の町興しとして、キルベガン自治体が蒸留所をビジターアトラクション(博物館)として残すよう改修をします。そして、クーリー蒸溜所がキルベガンとロックスウイスキーのライセンスを購入し、後に博物館も引き継いで蒸溜所としての活動を再開させました。
クーリー蒸留所の第2の蒸留所として、小規模ながら2007年から蒸溜を再開したキルベガン蒸留所ですが、現在はジムビームがキルベガン蒸留所を所有し、180年という長い歴史を持つポットスチルで蒸溜を行うなど、ブティック・ディスティラリーとしての評価を高めています。
現在、KILBEGGAN(キルベガン)の名を冠したものとしてリリースされているのは、蒸留所のサイト(kilbegganwhiskey.com)によると、KILBEGGAN、KILBEGGAN SINGLE GRAIN 8年、KILBEGGAN 21年となっています。