シェリー、マディラと並んで世界三大酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)のひとつに数えられているのが、ポルトガルのポート・ワインです。日本で一番有名なポルトガルのワインといってもよいでしょう。
ポート・ワインは、ポルト・ワインともいわれ、日本の酒税法上では甘味果実酒に分類されています。
ポート・ワインには赤と白があり、赤のポート・ワインは輝くルビー色をしており「ポルトガルの宝石」と称されています。
日本では、ポート・ワインというと甘口ワインの代表ですが、本来はポルトガルのドウロ地区で栽培されたブドウから造られる酒精強化ワイン(フォーティファイドワイン)です。
ポート・ワインの生産地域であるドウロ地区とは、ポルトガル北部のドウロ川とその支流沿いに広がる渓谷の一帯を指します。
ドウロ渓谷のブドウ畑と渓谷美は、素晴らしい景観を形成し、ユネスコの世界遺産にも登録されており、また、1756年、世界で初めて原産地管理法が導入された地域としても知られています。
ポート・ワインのブドウは、毎年9月~10月の収穫され、圧搾後、発酵過程に入ります。
ポート・ワインの場合、発酵途中に77%のブランデーを加えて、発酵を止め、必要な甘みを残すと同時に、アルコール分を強化するという製法の特徴があります。
このブランデーによる酒精強化により、強制的にアルコール発酵が止まり、糖分が多く残った状態のワインが出来上がります。
その後は熟成期間を経て、年末に滓引き・アルコール調整を行い、アデガと呼ばれる貯蔵庫で春まで眠ります。そして、ドウロ川の河口にあたるポルト市街(ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア)に運ばれ原産地証明シールが樽に貼られます。
ポルト・ワインがポルトと名乗るためには、ヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの港から出荷されなければなりませんが、ポルトから東へ100キロほどのドウロ川上流にあるレグアも、1978年から出荷地として認められているそうです。
ポート・ワインのアルコール分は、ホワイト・ポートが加減を16.5%とするほかは、19~22%となっています。格付けは、一般的なポートと上級品の特別銘柄に大別されます。
【一般的なポート・ワイン】
原料に白ブドウを使い、低温で通常より長期間発酵させたもの。熟成期間は3~5年間で、程よい酸味が特徴。食前酒によく用いられます。
トウニーとは黄褐色を意味します。長期間の樽熟成により色合いが薄くなり、トウニーになったポート・ワインです。熟成期間は10~40年で、優しい口当たりとまろやかな甘みが特徴です。
鮮やかなルビー色が特徴の最もスタンダードなポート・ワインです。ルビー・ポートはポート・ワインの中でも深いルビー色で、フルーティさが凝縮されており、力強い味わいです。
美しい深紅のルビー色を出すために、熟成中は極力酸素との接触を少なくすることが求められ、バルセイロという大樽や、ステンレスタンクを使って2~3年熟成させ、若いうちに瓶詰めされます。
【公的な特別銘柄のポート・ワイン】
単一の収穫年のブドウから造られます。収穫から3年目の7月から年末までにI.V.P.に申請し、承認を得てから、樽で7年熟成させた後、瓶詰めされます。ラベルには収穫年と共に瓶詰めの年も表示されています。特別銘柄の中では比較的早く飲み頃を迎えるポート・ワインです。
特に良い作柄の年にのみ造られる最高級品です。I.V.P.への申請は収穫から2年目の1月から9月までに行います。濾過せず、濃色瓶に詰められ、長期熟成を経て飲み頃を迎えます。熟成には長い時間を要しますが、類稀な香りと味わいが堪能出来ます。ただし、古いヴィンテージ・ポートは、大老の澱があるため、栓抜き後は、デキャンタに移して飲む方がよいそうです。ラベルには収穫年が表記されます。
ヴィンテージ・ポートの水準には達しませんが、それに続くと思われる作柄のブドウを原料とします。
収穫から4年目の3から9月の間にI.V.P.に申請許可を得ます。熟成期間は4~6年で、澱引きした後に、瓶詰めされます。ラベルは収穫年の表記が入ります。
※I.V.P.(Instituto dos Vinhos do Douro ePorto ドウロ&ポートワイン・インスティテュート)
代表的なポート・ワイン
ポルト20年 キンタ・ド・ボム・レティロ(ラモス・ピント)
レイト・ボトルド・ヴィンテージ(ワレ)
フォンセカ・ヴィンテージ・ポート(フォンセカ・ギマラエンス)等