グラッパ(Grappa)はイタリア特産の蒸留酒で、ブランデーの一種です。グラッパは、ワインを造った後に残る葡萄の皮や種、果軸、果汁などの搾りカスから再利用して蒸留してつくられるため、“貧しい人のリキュール”“カスとりブランデー”とも呼ばれていました。
グラッパの発祥には諸説ありますが、イタリアの蒸留技術自体は、11世紀の十字軍遠征時代の初期・ローマ帝国衰退前にはギリシャから伝わっていたとされており、当初は薬として蒸留されていたようです。
もともとワインは、貴族など富裕層しか飲むことができず、ワインを造った後の搾りカスは、葡萄畑の肥料として処理されていましたが、そのうち、貧しい人々がその搾りカスに水を加え、飲むようになりました。この搾りカスに水を加えたものはヴィネッロと呼ばれ、いつしか庶民はヴィネッロから蒸留酒を造るようになり、これがグラッパの始まりといわれています。
グラッパの蒸溜技術は、かなりの改良を繰り返し現在に至っており、イタリアでも人気の高いリキュールとして評価されています。
グラッパの製法は、搾りカス→再発酵→蒸留という工程で造られますが、同じ製法でも国によって呼ばれ方が異なり、グラッパと表記できるのはイタリア産のみとEUの法で定められています。
イタリアのグラッパは、フランスではマール、ドイツではトレスターブランド、スペインではオルホ、ポルトガル バガセッラと名前が異なります。
貧しい農民の「カスとり酒」というイメージであったグラッパは、かつては複数の葡萄の搾りカスを混ぜて蒸留していましたが、現在はマスカットやカベルネ・ソーヴィニヨン、メルロ、ネッビオーロなど単一種の葡萄から蒸留されるものもあり、食通のための世界に通用するお酒としての地位を築いています。
ほとんどのグラッパは蒸留後すぐに瓶詰めされて市場に出されるため、無色透明で、これはグラッパ・ビアンカ(白いグラッパ)と呼ばれます。
近頃はオークやサクラ、アカシアなどの木樽で熟成させた琥珀色のグラッパも流通しています。また、おしゃれなデザインの多いボトルもグラッパの魅力です。
木箱入りの最高級グラッパ
今は亡き「天使のようなグラッパ職人」と呼ばれた職人ロマーノ・レヴィのグラッパ。ひとつひとつ手描きのラベルがコレクターズアイテムになっている。
ロッシダシアーゴ社のグラッパ。大きな地球儀のデキャンタ。 台座からボトルを取り外すことができる。