ひと昔前までは「ワインはコルクを通して、常に呼吸している」といったことが、通説のようにいわれていましたが、現在、この説は否定され、「コルクは、ワインを完全に外気から遮断し、酸化を防ぐ役割を果たしている」というのが常識となっています。
コルクが空気を遮断することによって、ワインは長期熟成が可能になったとされています。
コルクはコルクオーク(樫)とよばれる樹皮が原料です。コルクがワインの栓として使われる前は、紙や木、布などが栓として使われていました。
ガラス瓶にコルクの木の皮を使う技術は、約250年前にイギリスでポルトガル産のコルクを使ったのが始まりとされています。
現在、世界で使用されているコルクの約半数近くがポルトガルから産出されており、世界最大のコルク産出国です。
コルクの性質として、弾力性と膨張性があげられます。ワインのコルクの役割は、栓をして、空気の混入や液漏れを防ぐといった目的だけではなく、ワインの保存状態など重要な情報を示す役割もあります。
ソムリエが栓を抜いた後、コルクの香りを嗅ぐのもそのためです。
現在のコルク栓には、いくつか種類があり、高級ワインに使われることの多いコルクオークが使われた天然コルクのほか、ガラス製や合成樹脂製、スクリューキャップ栓も使われています。手頃なカジュアルワインでは、スクリューキャップが定番になってきています。
コルクオークが高級ワインに用いられることが多いのは、コルクオークの性質が弾力性に富み、気密性があるためで、ワインの熟成に適しているからです。
コルクの長さはおおよそ35~55mmですが、長期熟成向けワインには、長いコルクが使われることが多いようです。
ワインを飲んだ後のコルクを収集されている方もいらっしゃいますが、コルクに付けられた焼き印は、偽造などを防ぐために、シャトー名やヴィンテージを刻印するようになったのがはじまりです。
コルクの液面側に結晶がついている
ワインと触れている部分に結晶がついたものを「酒石」といい、これはブドウに含まれる「酒石酸」が固まってできたもので、悪いものではありません。
コルクの上部が盛り上がっている
外側のコルクが盛り上がり、キャップシールなどが押し上げられているような状態は、ワインの保存時の温度が高い可能性があります。中のワインも劣化している恐れがあります。
コルクの外側にカビが付着している
コルクの外側につくカビは、湿度が保たれていたところに保管されていたことを意味しています。ワインにとって湿度は、味方であり、よいワインの証拠でもあります。ワインの品質には問題ありません。
コルクから液漏れしている
液漏れはコルクの弾力性が弱かったという可能性もあり、酸化していないか、しっかりテイスティングしたほうがよいでしょう。
コルク臭がする
これは「ブショネ」とよばれる劣化臭です。湿った段ボールのような臭いのブショネは、事故品の証拠です。
ブショネは、バクテリアに汚染された状態のワインのことを指し、通常コルクの汚染が原因とされています。このブショネは生産されるワイン全体のうち3%に発生するといわれます。
コルク臭は見た目ではわからず、テイスティングの際にチェックします。
現在では、カリフォルニアやオーストラリアなど新世界ワインを中心に合成樹脂製コルク、スクリューキャップ、王冠キャップなどを使用するワイナリーが増え、それとともにブショネの問題は減少しつつあります。
コルクが抜けなくて困ったら?
天然コルクが固くて抜けない場合は、コルクが乾燥して非常に硬くなっていることが考えられるので、しばらくボトルを横にして放置して下さい。ボトルを横にすることで、コルクを濡らすと、湿潤して抜けやすくなります。
合成樹脂製のコルクの場合は、密閉性が高く、空気の流入がボトル内にないため、コルクスクリューの先端を完全に貫通させれば、抜きやすくなる場合あります。
コルクが途中で割れてしまったら?
コルクを抜くのに失敗してしまい、コルクが割れてボトルの奥に残ってしまうと困ってしまいますね。そんなときはまず、コルクスクリューをコルクが貫通するまで押し込んでみて、それから引き抜いてみましょう。
大抵は引き抜けるはずですが、どうしても引き抜けない場合は、コルクをボトルの中に押し込んでください。瓶の中に落ちたコルクはそのままでも問題ありませんが、出来ればデキャンタージュ(ワインをボトルから別の容器に移すこと)をして、コルクの屑や割れたコルクの破片を取ってあげるとよいでしょう。