デキャンタージュというのは、ワインをボトルから直接グラスに注ぐのではなく、いったんデキャンタ(デカンタ・ワインを移し替えるためのガラス製の容器)に移す作業のことをいいます。
ワイン専門家によれば、デキャンタージュの目的は、
・澱を取り除く。
・空気と触れ合わせる。
・酸化を促進し、香りを開かせ渋みを丸くさせる。熟成中に生じた還元的臭気を脱酸させる。
・温度を上げる(室温にする)。
といったことがあげられます。
デキャンタージュが必要なワインは、澱のあるワインや、香りが十分に出ていない状態の比較的若いワインなどで、デキャンタージュすることによって、ワインの状態をよりよくすることが目的です。
通常は、古いワインについてはボトルの底に沈んだ「澱を取り除くため」にデキャンタージュされます。
また、ワインの香りが十分に出ていない状態を「ワインが閉じている」といいますが、若いワインで、まだワインが閉じている場合、ワインを空気に触れさせて、香りや味わいを引き出し「ワインを開かせるため」にデキャンタージュします。
ブルゴーニュタイプのワインは酸味が比較的強く、デキャンタージュすることで、果実味が飛んでしまいます。より酸味の強いものに変化する場合があり、通説としてはデキャンタージュしませんが、好みがありますので、酸味が好きな方はデキャンタージュされてもよいでしょう。
渋味の強いボルドータイプのワインは、若いフルボディーほど渋味が荒く、熟成するにしたがってマイルドな味わいになり、香りもよくなっていく傾向にあります。若いボルドータイプのワインはデキャンタージュすると味がまろやかになり、デキャンタージュ向きといえます。
デキャンタージュする2日前頃、ボトルを貯蔵庫から取り出して、垂直に立たせておき、澱などの沈殿物をボトルの底に、沈ませておきます。
そして、ワインボトルを開ける際は、ボトルの底に沈んでいる沈殿物をかき乱さないように、丁寧にワインボトルを開けます。
デキャンタージュする時は、澱がデキャンタに入らないように、ボトルの肩の部分のトクトクと脈打つようなひっかかりがおさまるのを待ち、その後でデキャンタに注ぎます。
ソムリエは、キャンドルなどの光源を使って、澱が入らないようにボトルの肩のあたりを照らすようにしています。
デキャンタージュする時間(デキャンタに注ぐ時間)は、ワインの特性により様々ですが、一般的にはラベルに印刷されている年代が新しいものほど長めに(2時間程度)、古いものほど短め(30分程度)にします。
最近は「クレ・デュ・ヴァン」というワインの酸化を促すワイングッズや、「デキャンティングポアラー」という、ボトルの口に取り付け、注ぐだけでデキャンタージュをする効果が得られるアイテムもありますので、家庭などは、そういったものを利用するのもよいかもしれません。
十分に熟成し、香りも味わいもよく、開いている状態のワインは、デキャンタージュの必要がありません。開いているワインをデキャンタージュすると、過度に酸化され、せっかくの風味が飛んでしまうことがあります。
レストランでは、デキャンタージュするかしないかは、ソムリエやワインコーディネーターにアドバイスを受けることができます。
デキャンタージュに用いられるデキャンタ
デキャンタージュに使うデキャンタの形には、開口したものや、蓋がついたものなど、様々なデザインのものがあります。
オーソドックスな形のデキャンタ
蛇の形をしたデザインのデキャンタ。渦を巻いた形により、その中を通るワインが空気と触れ合い、 芳醇な香り、まろやかな味わいへとワインがより魅力的に変化します。
高級デキャンタにみられるのがが「カナール(鴨・ダック)」や「コック(雄鶏)」スタイル
芸術性にも優れたバカラやサンルイなどのデキャンタ