ウイスキー造りには、工程ごとに様々なウイスキー職人が携わっています。ウイスキーの味の決め手には、水や空気、釜や樽、職人など、仕込みから樽貯蔵に至る各成長段階で様々な環境の影響を受け、個性を形成しながら、ウイスキーは育まれていきます。
ウイスキーの色は、よく「琥珀色」と表現されますが、その色味はイギリス、アイルランド、アメリカ、カナダ、日本など、それぞれの地域によってウイスキーの色も異なり、また環境によって香り、味わいも変わります。
ウイスキーそれぞれの違い・個性を生み出しているのが、風土と製法です。水がウイスキーの味の決め手となるのは、いうまでもありませんが、発酵や樽貯蔵の工程では、空気と反応し合い、芳香成分の形成にも影響します。さらに、これらはその時の気温・湿度によっても変化します。
専門家によれば、ウイスキーの味の決め手となるのは、下記の6つといわれています。
1. ピート香
2. 仕込み水
3. 酵母と発酵樽
4. 蒸溜器
5. 加水
6. 熟成樽
1.ピート香
麦芽の乾燥に用いられるのがピート(泥炭)です。原料に用いる大麦は2、3日水に浸して水分を吸わせた後、暫く床に置いて発芽させ、8~12日後に大麦の中に糖化酵素が生れ、モルト(麦芽)に成長します。
次ぎのモルトを乾燥させる工程で、ピートを一緒に焚きしめます。
ピートはスコットランドの原野に多くみられるヒースという植物が土に埋もれて炭化したもので、これがモルト・ウイスキーの個性といわれるスモーキー・フレーバー(燻煙香)を生み出します。
2. 仕込み水
モルトに温水を加えて糖化させる工程のことを「仕込み」といいます。1.のモルトと、ほかの原料穀物、温水を糖化槽に入れると、モルトのでんぷんが水中に溶け出し、糖化酵素によって糖に分解されますが、この仕込みのときの温水の水質によってウイスキーの味が変わります。
一般的に、仕込み水としては、まろやかな味に仕上がるミネラル分の少ない軟水がよいとされています。
3.酵母と発酵樽
糖化させて麦汁ができると、発酵の工程に入りますが、この発酵には、酵母が加えられます。
酵母にはいくつか種類があり、酵母探しは、ウイスキー職人の経験と技の見せ所といわれています。
酵母の活動は、発酵過程で、空気がどれだけ入るかということによってもが左右されます。空気が多く混ざると、ウイスキーの芳香の成分は少なくなり、軽快な味に仕上がるとわれています。
また、発酵槽の材質も影響し、最近はステンレス製が主流となっていますが、木製ならではの雑味から風味が生れることもあり、従来の木製槽を見直す動きもでてきています。
4.蒸留器
蒸溜とは、沸点の違いを利用して、発酵液から香味成分やアルコール度数の高い液体を取り出す工程のことをいい、蒸留の工程では温度管理が最も重要となります。
ここでは、スチルマンという、蒸留職人により、慎重に温度管理が行われます。
ウイスキーの種類によって使う蒸留器は異なり、主に単式蒸留器と連続式蒸留器機があります。
単式蒸留器は、ストレート型、ランタン型、バルジ型があり、材料や発酵による香りを多く残すのでモルト・ウイスキーに適します。
連続式蒸留器機は一度に効率よく度数の高い蒸留液を造ることができるので、シンプルな味わいに仕上がります。
5.加水
加水は樽貯蔵の前と、瓶詰めの前に行われ、加水に用いられる水の性質がウイスキーの美味しさの重要な決め手となります。加水の水も仕込み水と同様、ミネラル分の少ない地下水が理想とされますが、現在は、ウイスキーの香味に安定性を持たせるため、蒸留水を用いるのが一般的となっています。
6. 樽熟成
樽に入れられたウイスキーの原酒は、樽材を通して呼吸します。この時に硫黄化合物などの深い香り成分が空気中に蒸散され、樽に入ってきた空気によって原酒の成分は酸化し、風味に深みが増します。
更に樽材から溶け出す香りの成分や糖類などが、原酒の成分と微妙に影響しあい、ウイスキー独自の香味成分が造られていきます。
この樽熟成の工程で、荒々しかったウイスキー原酒がまろやかで香り高い琥珀色に成長していきます。
ウイスキー樽は主に、パンチョン、シェリーバット、バレル(バーレル)、ホッグスヘッドの4種類があり、ウイスキーが育まれる樽によって、ウイスキーの個性が開花します。
熟成に適した場所は、空気が澄み、適度な湿度を保った冷涼なところです。また熟成期間は、ウイスキーにより異なり、短くても3年、20~60年と長期熟成されるものもあり、それもそれぞれのウイスキーの個性となっています。ウイスキーは15年を過ぎると劣化しやすくなるといわれ、それ以上の熟成に耐えたウイスキーは上質で貴重なウイスキーといえます。