ウイスキーのような香り高い蒸留酒のテイスティングでは、‘香り’を利くことに力点を置くのが一般的です。多くのウイスキーは、ワインほど個性のバリエーションはありませんが、ウイスキーは時間経過とともに変わる香味を楽しむものといわれています。
ウイスキーのテイスティングでは、舌だけでなく、嗅覚で感じとる香りと、視覚でとらえる色が一体となって得られるものであり、嗅覚、視覚をフルに活用してウイスキーを分析していくことがテイスティングの醍醐味とされています。
プロのテイスティングでは、まず見た目の色と香りをきちんと把握することから始まります。甘い香りは甘い味、濃い色合いのウイスキーはとろみを連想させるといったように、嗅覚・視覚・味覚は密に関係しています。
また、ウイスキーは時間も味わいを繊細に変化させます。最初に口に含んだ時に得られる味、次に口やのどを通る時に感じる味、そして飲んだ後の印象であるフィニッシュ、さらにその後しばらく後残る味や香りのアフターフレーバー…これらが一体となってウイスキーの味わいが形成されるのです。
ウイスキーをテイスティングするには、まず、グラスを用意することから始めましょう。ウイスキーの香りを嗅ぐときに、鼻がすっぽり入るようなチューリップ型の背の高いグラスを用意がよいですが、テイスティンググラスがない場合は、グラス上部がすぼまった小ぶりのワイングラスがあるとよいでしょう。
そして、グラスに臭いが付着していないことを確認したら、ウイスキーをグラスに注ぎます。量はグラスの1/4以下程度におさめます。
最初に色を確認しますが、プロはこの時ウイスキーの色で、樽材、熟成年数、グラスの内壁を垂れるレッグ(脚)から粘度を読むのだそうです。
次に、鼻で香りを嗅ぎます。この嗅覚で香りを分析することをノージングと呼びます。 はじめの香り立ち(トップノート)を確認しますが、ストレートですので、強くノージングしないように気をつけましょう。
ノージングの後は、ストレートのまま飲むのではなく、ウイスキーと同量のミネラルウォーターをグラスに注ぎ、水と1対1に割ります(シングルカスクの場合は1対2)。
1対1の水割りにしてテイスティングするのは、ウイスキーの香り立ちがよくなるためです。これ以上うすくすると、逆に香味が弱くなり、利き分けがむずかしくなるといわれています。
ノージングで香りを感じたら、いよいよ舌、口中で味覚をテイスティングします。 口に含んでウイスキーを感じたら、のどごしや、最後までつづく余韻、後口のキレまで感じとりましょう。
アフターフレーバーまでの時間経過の中で、さまざまな香味が見え隠れするのが、テイスティングの面白さです。
ウイスキーをテイスティングしたあと、その味わいや香りを表現するには、以下のような言葉が使われます。
1.口に含んだときの舌で感じる表現
熟成による甘味
甘い香りからくる甘味
とろんとしたとろみ
舌にまとわりつくようなとろみ等
2.口中やのどごしの感覚
ふんわりとした香りが広がる
刺激的でピリピリする
のどの奥でぎらぎら感を感じる
つるつるとすべるような感じ等
3.フィニッシュ
ドライで乾いた感じ
うるおい感が残る
さっぱりした感じ
香ばしさが残る等
4.アフターフレーバー
花のような華やかな香りが残る
磯の香りがかすかに残る
ナッツのような香ばしさが残る
蜂蜜のような甘い香りが残る等