ウイスキーは、大麦、ライ麦、トウモロコシなどの穀物を、麦芽の酵素で糖化し、これを発酵させ蒸留したものですが、その製造工程のひとつである蒸留方法によっても、仕上がるウイスキーの味わいや香りが異なります。
蒸留とは、アルコールと水の沸点の違いを利用し、アルコールを濃縮するとともに、必要な香味成分と不必要な香味成分を分離する作業で、ウイスキーの蒸留法には「単式」と「連続式」とがあります。
単式蒸留は、手間と時間がかかる方法ですが、その分香りの複雑なウイスキーに仕上がります。
それに対して、連続式蒸留は、設備が近代的で様々な穀物に対応でき、生産効率がよい蒸留方法です。一般的に単式蒸留器は「ポットスチル」、連続式蒸留機は「パテントスチル」といいます。
ウイスキーはモルトウイスキーとグレーンウイスキーに大別されますが、モルトウイスキーは単式蒸留、グレーンウイスキーは連続式で蒸留するのが主流となっています。
専門家によれば、連続的にモロミを投入しながら、蒸溜する連続式蒸留機では、エチルアルコール以外の成分の少ない、ピュアな蒸留酒となり、もう一方の単式蒸留器では、1回の作業ごとにモロミを投入し、2~3回に分けて蒸留するため、それぞれの過程で様々な成分を含み、複雑な香味が生れるといわれています。
原料に大麦麦芽のみを使うモルトウイスキーは、単式蒸留で造られることが多く、比較的低いアルコール度数で採取され、香味成分が濃縮されます。一方で、大麦以外の穀物が使われるグレーンウイスキーは、連続式蒸留を用いて90%以上の度数で蒸留されます。
ほかに、モルト原酒同士を合わせたブレンデッドモルト(ヴァッテッドモルト)や、モルト原酒とグレーン原酒を合わせたブレンデッドウイスキーがあります。
【モルトウイスキー】
原料は大麦麦芽のみで、ほとんどが単式蒸留で生産される。蒸留過程で様々な成分が含まれるので、複雑な味と香りに仕上がる。一部、連続式でも生産されているが、その場合は低いアルコール度数で蒸留される。
モルトウイスキーには、ひとつの蒸留所で生産されたシングルモルトと、いくつかの蒸留所のモルトウイスキー原酒をブレンドしたブレンデッドモルトがある。
シングルモルトで、ひとつの樽のウイスキーだけをボトリングしたものは、シングルカスク(シングルバレル)と呼ばれる。
【グレーンウイスキー】
大麦以外の穀物も使用するウイスキーで、主に連続式で蒸留される。大量生産が可能なため、比較的安価である。純度が高く、香味は控えめ。グレーンウイスキーとして飲まれることは稀で、ブレンデッドウイスキーの原酒として出荷されることが多い。
【ブレンデッドウイスキー】
複数のモルト原酒とグレーンウウイスキーの原酒を合わせたもので、ブレンドする割合や原酒の種類によって、多彩な味や香味となるため、様々な好みに対応できる。