今回買取したお品物は、ボヘミアングラスで知られているモーゼル社のワイングラスでスプレンディッドシリーズです。
ボヘミアングラスはチェコスロバキアを代表する名産品の1つです。
ボヘミアンガラスは13世紀頃にヴェネチアから製造技術が伝わりましたがガラス産業は小さく、教会で使われるステンドグラスが始まりといわれています。
カール4世の頃にヴェネチアとの関係が深まり徐々にヴェネチアンガラスを手本としたガラス製造が始まるようになりました。
15世紀頃に東ローマ帝国が滅亡し、ヴェネチアのムラーノ島からボヘミアに移住するガラス職人が増えていきボヘミアのガラス製品も当時ガラス製品の生産の中心だったヴェネチアの影響を多く受け、ドイツ等の外国様式を取り入れ、原料のシリカ等の資源が豊富だったこともあり発展していきました。
ボヘミアンガラスの特徴としてはヴェネチアのクリスタッロと呼ばれるソーダガラス素材よりも透明度の高く、硬い良質な水晶のような素材がブナの木炭から開発されボヘミアンクリスタルと呼ばれるようになりました。
また、水晶を彫る為の技法を応用した細く柔らかい曲線や微妙な表現も描くことの出来るグラヴィール彫刻やV字型の溝などもボヘミアンガラスの発展を加速させました。
ボヘミア地方に数多くあるガラス工房の中でも今回買取したモーゼル社は150年以上の歴史ある工房で最高峰と称賛されています。
1857年にルードウィック・モーゼルがガラスの装飾工房を設立し、ヨーロッパの貴族の為に品質の高く芸術性あふれるガラスを作りながら権威ある万国博覧会や展覧会などに出品し、パリ世界展で銅メダルを取るなど多くの賞を受賞し、モーゼルの名前が知れ渡っていき確固たる地位を築き上げました。
また品質、信頼性の高さからイギリスのヴィクトリア女王、フランスのヨゼフ皇帝、ローマ教皇ピウス11世、ドイツのハプスブルク家の御用達にもなりました。
現在はガラス工場に約400人の従業員と20人程のカッティング職人が手作りの芸術品を支えています。
今回買取したモーゼルのスプレンディッドワイングラスはグラスケースのロック部分にサビがあったのは残念ですがグラスケース付きのお品物で、グラス自体にヒビや割れ、ひどい傷もない状態での買取となりました。
1911年に発表されたスプレンディッドは格子状の繊細なカットと金彩技法を駆使した名品として知られており、1953年のエリザベス女王戴冠式の贈り物に使われた事もあるため、中古市場でも高い人気を誇っています。
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