1970年に生まれた但野英芳は、父親が江戸切子職人であったものの最初は江戸切子に全く興味がなく建設の専門学校へ進みました。
専門学校卒業後は、設計事務所に就職し建築デザインを毎日描いていましたが、ある日父親がコンクールに出す為に作った作品を見て衝撃を受けます。
1つ1つ手作業にて作り上げる為2つとして同じ作品は作れない事や、独自の発想で作れる作品作りに惹かれ会社を辞めて1992年父親に弟子入りしました。
弟子入りから2年後の1994年には、自身の作った作品を第6回江戸切子新作展に初出品した所、東京カットガラス組合理事長賞を受賞し才能を発揮します。
この初受賞をキッカケに但野英芳は独立し、父親に教わっていた江戸切子の伝統的な柄ではなく現代的なデザインを独自に開発します。
その後、設計事務所で培ったデザイン力を元に第8回江戸切子新作展、第10回江戸切子新作展など様々な展覧会で賞を受賞し、29歳では六本木にあるギャラリー「青雲」にて初個展を開催しました。
日本の伝統工芸品に指定されている江戸切子の常識を打ち破り、新しい江戸切子を作り上げた但野英芳は、2006年には伝統工芸士に認定され、現在でも個性的で素晴らしい作品を製作し多くの人々から評価を得ています。
但野英芳の作風
一般的な江戸切子は伝統的な和柄のみを用いてシンプルな作品を作る事が主ですが、但野英芳の作品は様々なデザインを組み合わせて独自の作風を作り上げ、中には現代風の個性的な作品も多くございます。
蜥蜴(トカゲ)
第20回江戸切子新作展 東京都知事賞を受賞
この作品は黄色と紫のトカゲが2匹グラスを這っているようなデザインの花瓶です。
周りの丸い模様がまるで空気の泡のように見えて、水から這い上がってくるような作風になっています。
また、トカゲの鱗なども細かく表現されている素晴らしい作品となっています。
蜘蛛と蝶
この作品は片側に美しい蝶が描かれていますが、菊繋ぎ文を挟んだ反対側には蜘蛛の巣、底には蜘蛛が描かれているぐい呑です。
まるで飛んでくる蝶を巣の下で息をひそめて待ち構えているかのようなデザインとなり、物語が読めるような作品となっています。
四季一夏
この作品は、菊繋ぎ文の間に大きな波のモチーフが描かれていて全体的に涼しげなブルーの色合いが特徴的な夏を表現した徳利です。
この大きな波は、葛飾北斎の有名な作品「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」に描かれている波を元に描いたそうです。
金魚
この作品は、水の中を泳ぐ可愛らしい金魚が描かれたぐい呑です。
八角籠目文様と菊繋ぎ文様が描かれている中に金魚が1匹泳いでいる姿がとても可愛らしいデザインとなっています。
金魚の鱗など精密に彫られている事から技術力の高さが伺えます。
雷神
この作品は、透明なグラスに雷神が描かれているシンプルな作品です。
色がないと少し寂しさも感じますが、あえてシンプルにする事によって雷神の迫力を感じる事が出来る作品となります。
弧文
この作品は、江戸切子の伝統的な菊籠目文と菊つなぎ文を組み合わせた作品です。
江戸切子文様の中でも、細かい文様の2つを組み合わせた作品は、職人の腕が試されるお品物とも言えます。
1834年に江戸大伝馬町でビードロ屋の職人として働いていた加賀屋久兵衛がヤスリや研磨用の金剛砂を使いガラスの表面に模様を描いた作品が江戸切子の始まりと言われています。
その後、日本橋通油町の硝子・眼鏡問屋・加賀屋から暖簾分けをした加賀屋久兵衛は切子硝子も製作し、その輝かしいグラスは当時の江戸で人気を博しました。
その後ガラス工芸品の人気は衰える事なく、1873年には明治政府が日本の近代化を図るべく品川興業社硝子製造所を創設し、本格的なガラス工芸品製作を始めます。
1881年には、技術向上の為に日本政府がイギリスから招待したカットグラス技師エマヌエル・ホープトマンにより技術指導が行われ、多くの日本人が技術を学び、現在の江戸切子ガラスが誕生しました。
江戸切子の特徴としては、赤や青などの定番色から、緑・琥珀色・紫・黒など様々な色の種類があり、また、着物などでも用いられる和柄がグラスに彫られています。
様々な色の種類がありますが、煌びやか過ぎずそこに和柄を加える事で格調高い作品へと仕上がりました。
いわの美術では、今回ご紹介した但野英芳の江戸切子グラス以外でも、薩摩切子グラスや、黒川昭男、木村泰典の江戸切子グラスなどもお買取りしております。
お買取りの際には、品物単体よりも共箱が一緒に付いていた方が単体よりも査定額の評価が上がりますので、ご売却の際には必ず共箱があるか確認して下さい。
お品物の詳細が分かる場合はお電話でのお問い合わせでも大丈夫ですが、誰のどんな作品かわからない場合は、オンライン査定・ライン査定で品物の写真を撮ってお送り頂ければ査定員がお調べし査定額をお出し致します。
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