ワインの歴史~ワイン造りの始まり
人類による本格的ワイン造りの始まりは確定できませんが、人類がブドウを醸し飲んできた歴史は、壁画や粘土板の記述などにもみられます。
現存する最古の文献はギルガメッシュ叙事詩であるとされています。このギルガメッシュ叙事詩は、紀元前5000~4000年頃の出来事が書かれたものといわれ、古代バビロニア王・ギルガメッシュが洪水に備えて船を造らせた際、船大工にワインをふるまったとあります。
紀元前3000年頃には、メソポタミアからエジプトにかけての地域にワイン造りが伝わっており、紀元前1400年頃のエジプト王・ツタンカーメンの墓からもワインの容器が発見されています。
古代オリエントではじまったとされるワイン造りは、メソポタミアからエジプト人、フェニキア人、ギリシャ人へ伝わったとされ、ギリシャ神話にもブドウ栽培やワインの神であるディオニソスが登場しています。
ワインの歴史~ローマ帝国とキリスト教
その後ワイン造りは、ローマ帝国の領土拡大とともにヨーロッパ全土に広がりますが、特にヨーロッパでのワイン造りの文化が拡大していった経緯には、将軍ジュリアス・シーザーによるガリア征服(紀元前58年)が関係しています。
ジュリアス・シーザーは領土をヨーロッパに拡大し、占領地区ごとにブドウ畑を造り、ワイン造りを広めました。ジュリアス・シーザーのガリア征服によって、フランスのローヌ河流域、ブルゴーニュ、シャンパーニュ、ロワールなどの地域でワイン造りが盛んになるきっかけとなりました。
もうひとつ忘れてはならないのが、キリスト教の存在です。新約聖書には、最後の晩餐の時にイエス・キリストがパンを「我が体」、ワインを「我が血」として弟子達に与えたとあります。これがキリスト教における重要な儀式となり、ワインが聖なるものとして大切な役割をもつようになりました。
このことは、レオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」にも描かれていますが、キリスト教の布教とともに、ミサ用のワインの需要が高まり、修道士・修道院によってワインはヨーロッパ全土に広まっていきました。
ヨーロッパ各国へ広まっていったワインですが、中でも転換期となったのは、8世紀、フランク王国・カール大帝の時代といわれています。カール大帝は、現在のイタリア・ドイツ・フランス周辺から西ヨーロッパに領土を広げ、征服地にはキリスト教の修道院を置いて、伝導につとめるとともに、荒れたブドウ畑の立て直しや良質なワイン造りを奨励していきました。
この時、置かれた修道院のひとつであるベネディクト会が開いた畑(ボルドー、シャンパーニュ、ブルゴーニュなど)は現在でも、誰もが知るワインの一大産地として名高い地域となっています。 世界一有名なワインであろうヴォーヌ・ロマネ村のロマネ・コンティもベネディクト会が開拓したブドウ畑で造られた修道院ワインのひとつです。