プレミアムワイン～シャトー・ディケム

2017.4.13

プレミアムワイン～貴腐ワイン・シャトー・ディケム

貴腐葡萄をつくる３つの条件

食後に飲む甘いデザートワインの極めつけといわれるのが、極甘口ワインの最高峰・貴腐ワインです。

その希少性から「ワインの帝王・帝王のワイン」と呼ばれる貴腐ワインですが、その原料は貴腐化した貴腐葡萄です。

貴腐葡萄は、果皮の薄いリースティングやセミヨンなど完熟した葡萄の果皮に、貴腐菌（ボトリティス・シネレア）という細菌がついて出来る特殊な葡萄です。

極甘口、濃厚でコクと旨みのある芳香豊かな貴腐ワインを造るための貴腐葡萄は大変デリケートです。糖度の高い貴腐葡萄をつくる3つの条件といわれるのが、気候、収穫期、タイミングです。貴腐菌は日差しや地形、湿度などの気候条件が重なりあって、はじめて発生するものなのです。そして、気候条件をクリアして、せっかく貴腐菌が発生したとしても、熟する前に葡萄に付着してしまうと、葡萄にとっては害となってしまいます。また、付着後に雨が続くと腐ってしまうという大変デリケートな菌です。また、貴腐葡萄の収穫時期は一粒ずつ異なります。貴腐菌がうまくついて成熟した葡萄だけを一粒一粒選別しながらタイミングをみて、摘み取るという大変手間がかけられています。

貴腐葡萄は、夏は晴天が続き、収穫までの間は朝もやが立ち、午後には晴れるという、厳しい気候条件をクリアしないと造ることができないのです。だからこそ、貴腐ワインは貴重な一品といえるのです。

貴腐ワインの王様　シャトー・ディケム

デリケートな貴腐葡萄から造られる貴腐ワインは、糖度が高く、輝くような黄金色、舌にまとわりつくようなトロリとした香り、鼻腔に広がるフレーバー、長く漂う余韻…といった複雑で甘美極まりないワインです。

フランス・ボルドー地方南部のソーテルヌ地区を中心部に、ディケム（イケム）という土地が雄大に広がっていますが、この畑から誕生するのが貴腐葡萄から造られる貴腐ワインの王様シャトー・ディケムです。

シャトー・ディケムは、ソーテルヌのリュル＝サリュース家所有のシャトー（ワイン生産者）で、数百年の歴史を誇るボルドーにおいて最も古いシャトーの一つであり、世界最高の極甘口白ワインである貴腐ワインの生産者としてその名を馳せています。

フランスのソーテルヌ、ドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼ、ハンガリーのトカイは、世界三大貴腐ワインといわれますが、中でもフランスのソーテルヌのシャトー・ディケムは、格付けの筆頭に君臨しています。

シャトー・ディケムは、1711年にフランスから所有権を買い取ったソヴァージュ家が葡萄を植えはじめたといわれており、1855年パリの万国博覧会の際には、ソーテルヌ地区の白ワイン部門の格付けで「これを凌ぐものはない最高級品」ということで唯一の特別1級と指定されました。

ブドウ品種は、セミヨン、ソーヴィニヨン、ブランなどが使われ、1本の葡萄の樹から生まれるシャトー・ディケムはわずか1杯といわれています。こだわりぬかれた貴腐葡萄から生まれる貴腐ワインは、黄金色に輝きを放っており、蜂蜜やアプリコットの甘美な甘みと香りが、完璧なまでの優美なハーモニーを奏でた「自然が生み出した奇跡の神酒」とまで称されています。

シャトー・ディケムの他に類のない味わいは、18世紀には世界に知れ渡り、アメリカのトーマス・ジェファーソンやジョージ・ワシントンといった名立たる大統領、ロシアの皇帝などが好んで大量注文したという歴史をも持っています。

シャトー・ディケムイグレック

シャトー・ディケムイグレック（Chateau d`Yquem)は、貴腐ワインの帝王といわれるシャトー・ディケムの稀少な辛口白ワインです。ラベルにはYと描かれているのがトレードマークです。

シャトー・ディケムでは、畑に何度も足を運び、葡萄の房の中から完熟した貴腐果粒だけを、一粒ずつ丹念に手作業で選別し、摘むというこだわりの摘果方法をとっています。妥協を許さず、絶対的な補糖拒否するスタイル、全てオーク新樽使用、そして、完璧さを維持するため、葡萄が不作の年はボトリングしないという独自のスタイルです。

そのため、シャトー・ディケムではグレイトヴィンテージと言われる年でも、貴腐化のため好条件がそろわない年は、生産されない年が存在します。例えば、1930年、1951年,1952年,1964年,1972年,1974年などはシャトー・ディケムは造られませんでした。