世界三大酒精強化ワイン~シェリー酒
シェリー酒とは
食前酒の代表的存在であるシェリー。シェリー酒は、実は“白ワイン”の一種で、スペイン南部のアンダルシア州の南西の端にあるへレスという町を中心にした限定地域で造られています。
シェリー(Sherry)というのは英語名で、スペインではビノ・デ・へレス(Vino de Jerez)、すなわちへレスのワインと呼ばれています。
ワインに属するシェリーは、ポルトガルのポート・ワイン、マデイラ・ワインと並んで世界三大酒精強化ワインのひとつに数えられています。
酒精強化ワインというのは、あまり聞きなれない言葉ですが、ワインの発酵途中・発酵後に、高アルコール度の蒸留酒を加えて、アルコール度を少し高めたワインのことです。
食前・食後に飲むフォーティファイドワイン(fortified wine)と同じ意味で、ワインの中でも特殊なカテゴリーなものです。 通常のワインのアルコール度数は12~15度ですが、シェリーは、15~24度と、アルコール度数が高いワインです。
シェリー酒の特徴
シェリー酒の原料であるブドウの原料として認められているのは、シェリー原産地呼称統制委員会の統制法により、白ブドウのパロミノ、ペドロ・ヒメネス、モスカテルの3つの品種です。
シェリー酒の製造で特徴的なのが「フロール」と呼ばれる産膜酵母です。 シェリー酒の原料である白ブドウは例年、9月上旬頃に手摘み収穫され、果汁絞りが行われます。
そして、主にステンレスタンクで1か月程度の発酵を行い、11月頃までは、そのまま保管されます。そうすると、ワインの表面にフロールと呼ばれる産膜酵母が浮き上がってくるのですが、このスペイン語で「花」を意味する酵母の膜であるフロールが、シェリー酒独特の味わいをもたらしています。
中には、フロールをつくらないタイプのシェリー酒もありますが、このフロールという酵母膜によって、空気と酒の接触を遮断し、新鮮さを保つとともに、ナッツのような独特の風味を生むのです。
また、伝統的なシェリー酒は、ソレラシステムという方法で熟成させるのも、特徴的です。これは、常に均一な酒質を得るための手法で、まず古い酒の入った樽から、その一部を瓶に詰め、樽の空いた分に新しい酒を補充し、混ぜ合わせていくという方法です。
シェリーは樽から樽へ、新しいシェリーを古いシェリーと混ぜ合わせながら 熟成させていくのですが、こうすることで、新しいシェリーが出荷される頃には、熟成を重ねた古いシェリーとブレンドされ、その風味を身につけることができるのです。
そのため、ソレラシステムで造られた通常のシェリー酒のボトルラベルには、ヴィンテージ(収穫年)が表記されていないのです。
主なシェリー酒の種類
さっぱりとした辛口から黒蜜のような甘口まで様々なタイプが楽しめる、シェリー酒。製法や産地、によって多く種類があり、色、香り、味わいも幅広く、食前から食後まで様々な楽しみ方ができます。
フィノ/Fino
【アルコール度数】15度~17度【フロール】○ 【特徴】最もスタンダードなシェリー酒。フロールで熟成したもので、熟成年数は5年程度のものが多く、色は淡い麦わら色。アーモンドのような香りのシャープな辛口タイプ。
アモンティリャード/Amontillado
【アルコール度数】15度~22度【フロール】○ 【特徴】フィノを熟成させたもので、熟成年数は10年~20年以上のものまである。色は琥珀色で、ヘーゼルナツのような香り。フィノより重厚で力強い。
オロロソ/Oloroso
【アルコール度数】17度~24度【フロール】× 【特徴】フロールがつかなかった原酒を熟成させたもの。琥珀色からマホガニー色で、ワインが染みた木樽やクルミ、ナッツを思わせる華やかな香り。味わいは豊潤でコクがあり、甘口・辛口両方が造られる。
ペドロ・ヒメネス/Pedro Ximénez
【アルコール度数】15度~22度【フロール】× 【特徴】天日で乾燥したペドロ・ヒメネス種の濃縮ブドウ果汁を加えて熟成させたもの。色は非常に濃い暗褐色で、干しブドウのように濃密な香りで、味わいも極甘口タイプ。
マンサニーリャ/Manzanilla
【アルコール度数】15度~17度【フロール】○ 【特徴】海辺の町サンルーカル・デ・バラメダで造られる、フィノの地域限定版。味わいや香りはフィノに似ているが、シャープでカモミールのような香りのするドライで軽やかなタイプ。
ペイル・クリーム/Pale Cream
【アルコール度数】15.5度~22度【フロール】○ 【特徴】フィノをベースにペドロ・ヒメネスと濃縮還元ジュースをブレンドしたもので、酸味と甘さのバランスがよい。黄色がかった麦わら色、シャープでエレガントな香りで食事にもあうほのかな甘口タイプ。
代表的なシェリー酒
イノセンテ・フィノ(パルデスピノ)
ロマテ NPU アモンティリャード(サンチェス・ロマテ・エルマノス)
アルマセニスタ・オロロソ・パタ・デ・ガリーニャ 1/38(エミリオ・ルスタウ)
マンサニージャ・ラ・ヒターナ(ボデガス・イダルゴ・ラ・ヒターナ)
マンサニーリャ・ラ・ゴヤ(デルガド・スレタ)等